腎機能の指標に推算糸球体濾過量eGFRが推奨される理由

推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)は、血清クレアチニン値(Cr)・年齢(age)・性別から以下の推算式を用いて糸球体濾過量を推定します.この推算式は18歳以上に適用されます。

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腎機能の指標に推算糸球体濾過量eGFRが推奨される理由

腎機能を評価する方法はいくつか知られていますが、最も標準的なものは糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)です。腎臓の最も基本的な働きは血液を糸球体で濾過することであり、これによってできる濾液の量(GFR)が腎臓の機能指標としてふさわしいと考えられます。濾過により血中の中分子から低分子のものが血管内から水とともに濾過されて血管外(ボーマン腔〜尿細管)へ排出されます。濾液は尿細管を通過する間に体にとって必要なもの(水・ナトリウム・カリウム・重炭酸など)は再吸収されますが、不必要なもの(老廃物)は再吸収されない、もしくは十分再吸収されず、場合によっては逆に尿細管へ分泌されたりしながら尿中に濃縮された状態で体外に排出されます。GFRは腎臓の他の機能(酸塩基平衡・エリスロポエチンの産生・ビタミンDの活性化など)とおおむね良く相関します。

GFRの測定法としては腎クリアランス法・血漿クリアランス法が主に用いられます。イヌリン・イオタラメートなどを用いた腎クリアランス法は正確にGFRが測定できる反面、定時的な尿採取が必要、持続的な点滴静脈注射が必要、手技が煩雑、放射線被爆などの欠点があります。クレアチニンクリアランスは尿細管からの分泌があり、正確にGFRを反映しないことはよく知られています。シスタチンCについては現在、測定の標準化が行われており、今後クレアチニンに代わるマーカーとなりうるのかどうかの検討が行われています。血漿クリアランス法は尿採取もなく測定は容易ですが、体格によっては正確でない、放射線被爆などの欠点があります。また、これらとは別に腎シンチグラフィーで体外的に測定する方法もありますが、かなり不正確です。

このようにGFRは直接測定が可能ですが、その手技は煩雑であったり放射性物質を用いたりするため、日常の健診や大規模な疫学調査では手軽に行うことが難しいので、誰でも手軽におおよそのGFRを知ることができれば慢性腎臓病対策が進むと考えられ、日本腎臓学会では以下の計算式を推算GFR(eGFR)として推奨し普及を図っています。

推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)は、血清クレアチニン値(Cr)・年齢(age)・性別から以下の推算式を用いて糸球体濾過量を推定します.この推算式は18歳以上に適用されます。GFRの単位中で“1.73m2”は、日本人の健常成人における平均体表面積を意味します。
 eGFR(男) = 194×Cr^−1.094×age^−0.287
 eGFR(女))= eGFR(男)×0.739

※eGFR計算式は、日本腎臓学会プロジェクト「日本人のGFR推算式」より2008年3月に出された新しい推算式です。

・CKD(慢性腎臓病)の定義:1)2)のいずれかまたは両方が3ヶ月以上持続するもの
1)eGFR<60 (ml/min/1.73m2)
2)尿異常・画像診断・血液・病理で腎障害の存在が明らか(特に蛋白尿の存在が重要)

・CKDステージ分類(数値はeGFR)
ハイリスク群:≧90(CKDのリスクファクターを有する状態で)
病期1:≧90 腎障害(+)GFR正常または亢進
病期2:60〜89 腎障害(+)GFR軽度低下
病期3:30〜59 GFR中等度低下
病期4:15〜29 GFR高度低下
病期5:<15 腎不全

※GFR推算式が適応できない状態があります。
・急速に腎機能が変化する状態(急性腎不全)
・年齢(小児、超高齢者)や体格の異常(極端な痩せ又は肥満)
・筋肉量が異常(運動選手、栄養失調状態、筋肉疾患を有する人、下肢切断患者など)
・クレアチン摂取異常(クレアチンサプリメント常用者など)

eGFR(糸球体濾過量)計算フォーム

シスタチンC による eGFR推算式とCKD分類2012

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