骨型アルカリフォスファターゼ(BAP) - 骨形成を担う骨芽細胞の活性度を反映する指標。他の尿中骨形成マーカーより日内変動が小さく、骨吸収抑制剤の治療効果判定に有用。

骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)

骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)は、アルカリ性の条件下でもっとも効率よくリン酸のエステル結合を切断する酵素、アルカリフォスファターゼ(ALP)の一種です。
数あるALPアイソザイムのうち、電気泳動法で陽極から3番目に泳動されるため、ALP3とも表記されます。その定量には、以前は電気泳動法にてALPをアイソザイムに分離し、各分画の比率から濃度を推定する方法がとられていましたが、骨代謝学の進歩に伴い、骨型
ALPのみを特異的抗体で簡便に定量する方法が開発され、さまざまな骨疾患の診療に応用されています。

BAPは骨形成を担う骨芽細胞の細胞膜に、フォスファチジルイノシトールアンカー(GPI-アンカー)を介して結合しています。血中に放出されるのは、これが特異的フォスフォリパーゼC(PIPLC)により分解され可溶性型となったものです。
BAPは骨芽細胞により合成されるため、骨芽細胞が活動的なとき、特に石灰化初期において活性が高い。すなわち、骨形成の際に石灰化が進行する場所においてBAPの濃度は増加しています。このためBAPの上昇は骨形成の亢進を反映し、骨の代謝回転が早い場合に高
値を示します。

年齢によって血中BAPの値は異なり、小児で骨の代謝回転が特に活発なため他の年齢層より高値を示します。成人では安定した値をとるが、閉経期以後の女性ではホルモンの影響により再び上昇します。
BAPは血中半減期が約3.5日と比較的長く、また血中濃度で測定されるため、1型コラーゲン架橋Nテロペプチド(NTx)やデオキシピリジノリン(DPD)のように尿を用いる他の骨代謝マーカーのような日内変動がみられず、腎機能の影響も受けにくい。

同様の血中骨形成指標としてオステオカルシン(BGP)が知られていますが、BGPは副甲状腺機能亢進症や腎性骨異栄養症などでよく用いられます。BAPもBGPも骨吸収亢進時において、骨吸収抑制剤を使用した際に治療効果のモニタリングに有用です。また、前立腺癌や乳癌などの骨転移の補助診断にも有用性が報告されています。
なお、目的・用途に応じて基準値が別に設定されているため、使い分けが必要です。

検査材料:血清
基準値:単位(U/L)
    M 13.0〜33.9 F 9.6〜35.4
    癌の骨転移判定(Cut-off値):M 29.4  F 28.2 U/l
測定方法:EIA

高値を示す病態
 骨Paget病、甲状腺機能亢進症などの代謝性疾患、原発性の骨癌
 前立腺癌、乳癌、肺癌等の骨転移、腎性骨異栄養症

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