くも膜下出血 血液検査による全身状態の把握 - くも膜下出血(SAH)は脳だけでなく、心臓・肺を含めた全身臓器にも強いストレスを与えるため、血液検査でも種々の異常が認められます。これらは重症度判定や全身管理に有用な場合があります。

くも膜下出血 血液検査による全身状態の把握

くも膜下出血(SAH)は脳だけでなく、心臓・肺を含めた全身臓器にも強いストレスを与えるため、血液検査でも種々の異常が認められます。これらは重症度判定や全身管理に有用な場合があります。
1)CRP:炎症反応
重症のSAHや脳血管攣縮を認める症例では、髄液および血清中のCRPレベルが高値となり、CRP高値は予後不良と強く相関するとの報告があります。
2)血中カテコールアミン値
SAH重症例では、発症直後からsympathetic stormと呼ばれる交感神経の過剰緊張状態が生じ、肺水腫・無呼吸・重症不整脈・心筋虚血など、生命に影響を及ぼす場合も少なくありません。発症直後は血中カテコールアミン値は高値を示し、その後24時間以内に急速に正常化することが報告されています。また重症例ほど高値を示し持続する傾向があります。

3)ストレスインデックス(stress index:SI)
SAH発症直後には血中カテコールアミン値が上昇し、これにより血糖値が上昇、カリウム値が低下することが知られています。
ストレスインデックスSI=血糖値÷カリウム値
SIは血中カテコールアミン濃度と相関すると考えられるので、血中カテコールアミンの測定をしなくても、血糖とカリウムで予測可能です。SI値が40以上で脳内出血や脳室内出血の合併も高くなり、SAHの重症度を推測する簡便な方法といえます。
4)ナトリウム利尿ペプチド(ANP・BNP)
ANP(atrial natriuretic peptide)は心房、BNP(brain natriuretic peptide)は左室への負荷により分泌が促進され、いずれもNa利尿・血管拡張・レニン−アンギオテンシン系の抑制、腎臓の糸球体濾過率の上昇、交感神経系の活動抑制などの作用があります。ANP、BNPはSAH発症後約10日間は高値を維持し、この間Na利尿による低ナトリウム血症や循環血液量の減少が発生し、脳血管攣縮による脳血流低下を憎悪させる一因となります。
5)電解質異常
SAH後の低ナトリウム血症の発生率は30〜50%と高く第3〜14病日に発生します。一般に血清ナトリウムが120mEq/l以下で意識障害や脳浮腫、痙攣発作を起こすといわれています。

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