血中・尿中 ヘプシジン 値が変動する病態 - ヘプシジンは、主に肝臓で産生されるペプチドホルモンで、さまざまな刺激因子によって複雑に制御されています。

血中・尿中 ヘプシジン 値が変動する病態

ヘプシジン は、主に肝臓で産生されるペプチドホルモンで、血中に分泌された後、一部が尿中に排泄されます。肝臓におけるヘプシジンの発現は、さまざまな刺激因子によって複雑に制御されています。ヘプシジンの発現を増加させる代表的な要因は鉄負荷と炎症で、逆に発現を低下させる要因は低酸素状態と赤血球造血です。炎症性サイトカインであるインターロイキン6(Interleuikin:IL)、TNF-αおよびIL-1βが肝細胞に作用すると、JAK2-STAT3(janus kinase2/signal transducer and activator of transcription3)系を介して、転写レベルでヘプシジン産生が増強します。また、血清鉄や細胞内鉄が高まるとヘプシジン産生が亢進します。一方、低酸素状態ではhypoxia-inducibil factor:HIFを介してヘプシジンの産生が低下します。また、貧血で骨髄の赤芽球数が増加する病態では、赤芽球から産生された液性因子がヘプシジンの産生を抑制する可能性が指摘されいますが、その因子の詳細については不明な点が多いようです。

正確に活性型ヘプシジンを測定するには質量分析計が必要で、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析などが用いられいます。競合的ELISA法を用いた測定キットも市販されていますが、ヘプシジンの前駆体であるプロヘプシジン抗体、あるいはヘプシジンのアイソフォームを検出する可能性があるため注意が必要です。
臨床的には、遺伝性ヘモクロマトーシスのスクリーニング、慢性炎症による貧血と鉄欠乏性貧血の鑑別や以下の疾患の診断に有用です。

・増加する病態
炎症性疾患、輸血などの鉄負荷による鉄過剰症、血液透析患者、肥満児、TMPRSS6遺伝子変異による貧血
・減少する病態
貧血、低酸素、鉄欠乏状態、遺伝性ヘモクロマトーシス、骨髄異形成症候群のRARS、先天性赤血球異形成貧血1型、βサラセミア・メジャー

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