A/G・AG比(albumin/globulin ratio) - 血中のアルブミン(A)とグロブリン総量(G)の比を算出したもの。重症肝疾患やM蛋白血症で低下、無ガンマグロブリン血症で上昇。

A/G・AG比(albumin/globulin ratio)

ヒトの血清中にはおよそ6.7〜8.3g/dlの蛋白質が含まれています。これらはセルロースアセテート膜による電気泳動で易動度の高い順にアルブミン、α1-グロブリン、α2-グロブリン、β-グロブリンと、γ-グロブリンに分画されます。A/Gはこれらのうち、アルブミン(A)と残るグロブリンの総量(G)との比を表わすものです。得られる情報量は蛋白分画にくらべて限られていますが、簡便に病態を把握する上では有用な検査です。
A/Gは蛋白分画により比を算出する場合もありますが、通常はビューレット法により総蛋白を、BCG法により測定したアルブミン値をそれぞれ求め、総蛋白値からアルブミン値を引いた値をグロブリン値とし、これで割ることにより求められます。
A/G=アルブミン/(総蛋白−アルブミン)

したがって蛋白分画像からの計算とは必ずしも結果が一致せず、A/Gの方が高めに算出されることがあります。

A/Gはアルブミンおよびグロブリンそれぞれの量的変化を反映します。臨床的には、アルブミンの低下とグロブリンの上昇を示す疾患での異常低値が問題となる場合が多く、肝機能低下や糸球体腎炎などでのアルブミン減少は、アルブミン単独でみるよりもA/G 比でみると、より病態を把握しやすいとされています。一方、グロブリンが減少する疾患は低〜無ガンマグロブリン血症以外ほとんどなく、アルブミンが増加する疾患も高度の脱水以外はほとんど存在しません。

アルブミンは肝で合成され、ホルモン、脂肪酸等の輸送と膠質浸透圧の維持を行うもっとも基本的な血清蛋白です。ネフローゼ症候群や糸球体腎炎、火傷、癌性胸膜炎・腹膜炎などのアルブミン漏出性疾患や栄養不良、甲状腺機能亢進症などではアルブミンが減少し、A/Gは低値を示します。慢性炎症性疾患では免疫グロブリンを含むγ-グロブリンの増加に加え、消耗状態を反映してアルブミンが減少するためA/Gは低値となります。また肝硬変が進行しアルブミン合成能が低下したところにIgAやIgMの増加が加わると、A/Gはいっそう低下します。

一方、脱水による血液濃縮状態ではアルブミン上昇をみることがありますが、グロブリン分画も同様に濃縮されるため、A/Gに理論上大きな変動はみられません。低〜無γ-グロブリン血症では、グロブリン分画の相対的減少によりA/Gが上昇します。

検査材料:血清
測定方法:BCG法・ビューレット法
基準値:1.1〜2.0

高値を示す病態
低〜無γ-グロブリン血症

低値を示す病態
(1)主としてアルブミンの低下を反映した病態
1. アルブミン合成低下:肝硬変、急性および慢性肝炎、栄養失調症、飢餓状態、慢性炎症性疾患による消耗状態
2. 体外等への喪失:ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、蛋白漏出性胃腸症、吸収不良症候群、熱傷、高度の水疱性皮膚疾患、腹水・胸水貯留性疾患(癌性ならびに炎症性)
3. 代謝亢進、甲状腺機能亢進症

(2)主としてグロブリンの上昇を反映した病態
1. 多クローン性の免疫グロブリン増加炎症性疾患(とくに膠原病、慢性感染症、急性肝炎など)、慢性肝炎、肝硬変(IgA, IgMの増加を伴うことが多い)
2. 単クローン性の免疫グロブリン増加(※)、多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症(両者とも時に高度の高γ-グロブリン血症をみる)、本態性M蛋白血症(軽度に留まる)

※これらの病態では蛋白分画でMピーク像がみられ、免疫電気泳動ではM-bowが検出されるため、いずれかによる検索が必要です。

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