フェリチン 鉄の貯蔵状態を反映 - 潜在的鉄欠乏症や、鉄過剰症の診断には欠かせない検査。また急性・慢性骨髄性白血病、肝癌、膵癌での治療効果・モニタリングにも有用。

フェリチン 鉄の貯蔵状態を反映

フェリチンは内部に鉄を貯蔵する中空部分をもつ分子量約44万の可溶性蛋白です。2種のサブユニットH型(心型)とL型(肝型)が24個集合しています。アイソザイムにならってイソフェリチンとも呼ばれます。 
肝臓・脾臓に多量存在し,腸粘膜・胎盤・心臓・腎・赤血球など広く分布しており、体内の貯蔵鉄量との間に一定の関係(成人の血清フェリチン1ng/mL=貯蔵鉄8〜10mg/mL)があり潜在的鉄欠乏症や鉄過剰症の診断には欠かせない検査です。また、急性・慢性骨髄性白血病、肝癌、膵癌での治療効果・モニタリングにも有用です。
フェリチンの役割は鉄を細胞内に貯蔵し、トランスフェリンとの間で鉄のやり取りを行なって、血清鉄の値を適切に維持することです。
現在では、臓器特異的な20種類以上のイソフェリチンが知られており、大別すると肝や脾由来の塩基性フェリチンと、胎盤などに由来する酸性フェリチンに分類されます。

血中フェリチン濃度低下の原因でもっとも一般的なのは鉄欠乏です。正常成人の鉄貯蔵量はおおよそ1,000mgですが、貯蔵鉄の減少と共にフェリチンも減少します。逆に鉄過剰状態でフェリチンは増加し、フェリチン鉄が凝集して不溶性のヘモジデリンを形成します。
また、フェリチンは慢性炎症性疾患などにみられる網内系への鉄貯留や、肝炎などの細胞破壊による血中への逸脱などにより上昇します。悪性腫瘍などでフェリチン産生亢進がみられることがありますが、腫瘍マーカーとしての感度、特異度は低いとされています。

女性は月経により鉄を失うため貯蔵鉄が少なく、フェリチン値は男性より有意に低くなります。しかし、加齢により上昇する傾向があり、閉経後は男性の値に近づきます。なお、輸血や鉄剤投与はフェリチン値を上昇させるので留意する必要があります。

検査材料:血清
測定方法:CLIA
基準値:単位(ng/mL)M 18.6〜261 F 4.0〜64.2 鉄欠乏性貧血および貧血のない鉄欠乏の診断基準は12ng/mL 未満です。

高値を示す病態:白血病、急性膵炎、骨髄線維症、再生不良性貧血、細網肉腫、腎疾患、多発性骨髄腫、不良性貧血、膵癌、急性肝炎、鉄芽球性貧血、慢性肝炎、肝癌、感染症、胃癌、悪性貧血、悪性リンパ腫、ホジキン病、ヘモクロマトージス、肝硬変 など

低値を示す病態:真性多血症、妊娠、発作性夜間血色素尿症、鉄欠乏性貧血、消化器腫瘍、消化器潰瘍、ビタミンC欠乏症 など

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