尿沈渣 - 尿中の細胞や結晶成分を分析して泌尿器系疾患を診断する基本的な検査。病態解析に多くの情報を得ることができます。

尿沈渣

尿沈渣中にみられる成分は、尿路の各部から混入する赤血球・白血球・上皮細胞・腫瘍細胞・細菌、腎尿細管に由来する各種円柱、その他尿から析出する各種結晶、投与薬剤の結晶などです。
尿沈渣を検出するには清潔に採尿することが肝要で、排尿し始めと終わりを棄てた中間尿をとり、採尿後1時間以内の新鮮尿で検鏡します。

検査方法:遠沈鏡検(無染色)

1)赤血球:毎視野に数個/HPF(High Power Field:400倍鏡検)以上認められれば病的である可能性があり、結石や泌尿器系腫瘍慢性腎不全・特発性腎出血等が疑われます。一般に上部尿路の出血では、赤血球の変形が下部尿路より強いとされます。

2)白血球:性差が存在するものの、一般に数個/HPF以上認められれば泌尿器系の疾患、特に膀胱炎、腎盂腎炎などの尿路感染症が疑われます。細菌感染では多核白血球、結核や移植腎の拒絶時は
リンパ球、間質性腎炎では好酸球が主体となります。

3)円柱:正常尿ではほとんど観察されません。種類・性状の観察によって、尿細管の崩壊過程と尿停滞の程度を知ることができ、円柱の数は病変の広がりを示します。

1. ガラス円柱(蛋白尿、健常人でも運動後に出現)
2. 顆粒円柱 (慢性腎炎、ネフローゼ)
3. 赤血球円柱(急性腎炎、腎出血)
4. 白血球円柱(腎盂腎炎)
5. 上皮円柱 (尿細管病変)
6. ロウ様円柱(腎炎、ネフローゼ)
7. 脂肪円柱 (ネフローゼ、ループス腎炎、糖尿病性腎炎など)

4)結晶性沈渣:体温から室温に冷却されることで、尿中に結晶が析出しやすくなるため、結晶の存在が、そのまま結石の存在を意味するものではありません。pHや投与薬剤によって特徴的な結晶が認められ、食事によっても変動します。
・常在成分の結晶化したもの(リン酸塩・シュウ酸塩・尿酸塩・炭酸塩・酸化ナトリウム)
・常在成分でないもの(薬剤結晶)、病的成分(シスチン・チロジン・ロイシン・ビリルビン)、 ・病的意義不明のもの(コレステロール)

5)その他:精子・トリコモナス原虫・蟯虫卵・細菌・真菌・外界からの混入物(花粉・胞子・昆虫の体成分)、脂肪球(高脂血症で出現)などが観察されます。

※これらの数量は目視による判定のため、1ランク程度の増減は測定誤差の範囲と考えてさしつかえく、あくまでどの成分が出ているか、病的な量かを判断することが肝要です。

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