伝染性単核症におけるEBV特異的抗体の消長と出現 - 感染により伝染性単核球症、上咽頭癌等を発症するウイルス。VCA-IgM陽性かつEBNA陰性のとき伝染性単核球症を疑う。

伝染性単核症におけるEBV特異的抗体の消長と出現

EBウイルス(EBV)は1964年バーキットリンパ腫(BL)細胞中より見いだされたヘルペス属のDNAウイルスです。EBVは常在性ウイルスで、口腔内に存在し、主な感染源は唾液といわれています。本邦では、就学前に人口の80%以上が不顕性に感染し抗体を保有しており、持続感染・再活性化が特徴です。

EBV感染により引き起こされる代表的な疾患は伝染性単核球症( Infectious mononucleosis:IM)、バーキットリンパ腫(Burkitt's lymphoma:BL)、上咽頭癌(nasopharyngeal carcinoma:NPC)などのほかにHodgkin病、鼻リンパ腫(T cell or NK cell)、natural killer(NK)白血病、一部の胃癌などと関連のあることが次々に明らかにされています。
前述のように小児期までに感染するとほとんどが不顕性に終止しますが、思春期以後に感染すると半数程度にIMを発症します。IMの臨床症状はリンパ節の腫脹や発熱であり、検査所見として白血球像で異型リンパ球(atypical lymphocyte)が認められます。

EBVの抗体価は、ウイルス自体の性質から、通常3種類の抗原に対して測定されます。すなわち、VCA(Viral Capsid Antigen:ウイルスカプシド抗原)、EA-DR(Early Antigen-Diffuse and Restrict complex:早期抗原)、EBNA(EBV Nuclear Antigen:EBV核内抗原)です。実際には各々のIgG、IgA、IgMクラスの抗体が測定されます(EBNAを除く)。これらの抗体価が一定のパターンで推移することを利用して、EBV感染の進行状況が診断されます。

VCA-IgM抗体の上昇は初感染を示唆し、VCA-IgG抗体は急性期に次第に上昇し回復した後も終生持続します。VCA-IgA抗体はEBウイルス関連の上咽頭癌に特徴的であり、早期発見・治療効果・再発の指標になり得ます。EADR抗体はウイルスの増殖の程度とよく相関する抗体で、初感染の急性期および回復期・持続感染・再活性化の時期に出現します。EBNA抗体は過去の感染から回復したことを示します。一方、PCRによる組織からのEBVの検出はウイルスの存在する実証となり有用です。

初感染の場合、一般にVCA-IgG、VCA-IgM、EA-DR-IgGが出現。特にVCA-IgGはほぼ100%検出されます。続いて数カ月後にEBNAが出現します。
一般にVCA-IgM陽性、EBNA陰性の場合は初感染によるIMが推定されますが、VCA-IgMの出現率は70%程度に過ぎず、VCA-IgMが陰性だからといって必ずしもIMが否定されるわけではありません。この場合は臨床症状や白血球の所見と併せて診断されます。BLとNPCに関しては、ともにVCA-IgGとEA-DR-IgGの著しい高値とEBNAの陽性が認められます。しかし、NPCではVCA-IgAとEA-DR-IgAが陽性になることが多いのに対し、BLでは一般に陰性です。

陽性を示す病態:伝染性単核球症、慢性活動性EBV感染症、バーキットリンパ腫、上咽頭癌、日和見Bリンパ腫(最近は胃癌との関連も指摘されている)

EBVと伝染性単核球症

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