HER2 乳癌の治療薬 トラスツズマブの効果を推定 - HER2の発現度は、乳癌の治療薬トラスツズマブの治療効果を推定する指標となり得ます。

HER2 乳癌の治療薬 トラスツズマブの効果を推定

HER2 とは、Human Epidermal Growth Factor Receptor 2 (ヒト上皮成長因子受容体2)と呼ばれる蛋白質の略称です。
HER2 蛋白は、細胞膜を貫通する形で存在する受容体蛋白で、細胞の増殖に深く関与しているため、HER2の過剰発現は一般に予後不良を示唆します。トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)は、このような癌遺伝子の知見を応用した抗癌剤であり、HER2蛋白を標的としたヒト化モノクローナル抗体です。1998年、米国FDAにより世界で初めて認可されたトラスツズマブは、乳癌、とりわけHER2蛋白が過剰発現した転移性乳癌で、単剤使用または化学療法等と併用され、効果が認められています。
しかし、HER2蛋白をターゲットとしている以上、HER2の発現がない癌でトラスツズマブの治療効果は期待し難く、HER2の発現度は、トラスツズマブの治療効果を推定する指標となり得ます。我が国でのトラスツズマブの使用は、「HER2過剰発現が確認された転移性乳癌」(IV期乳癌および肝・骨・肺などの再発乳癌)で承認されています。

HER-2/neu(IHC法)は、免疫組織化学染色により、直接HER2蛋白の発現を光学顕微鏡で観察するもので、ホルマリン固定、パラフィン包埋した組織切片の染色パターンにより、スコアで報告されます。
なおHER2の発現を、本法とDNAレベルで遺伝子増幅を検査するFISH法で比較した場合、両者が乖離する症例が報告されています。FISH法陽性の場合、トラスツズマブの効果は比較的良好ですが、IHC法陽性でもFISH法が陰性の場合、一般的にトラスツズマブの効果は期待し難いとされています。
検査方法:免疫組織化学染色
検査材料:パラフィンブロック
判定基準
・スコア0:被検体組織中の腫瘍細胞のなかでHER2陽性細胞がない、あるいは10%に満たないもの
・スコア1+:被検体組織中の腫瘍細胞のなかでHER2陽性細胞が10%以上あるが、腫瘍細胞の一部の膜に限局した弱い染色強度を有するもの(4倍の対物レンズ下で細胞膜の染色性が確認できない)
・スコア2+:被検体組織中の腫瘍細胞のなかでHER2陽性細胞が10%以上あり、腫瘍細胞の膜に限局した中程度の染色強度を有するもの
(4倍の対物レンズ下で細胞膜の染色が確認できる)
・スコア3+:被検体組織中の腫瘍細胞のなかでHER2陽性細胞が10%以上あり、腫瘍細胞の膜に限局した強度の染色性を示すもの
※腫瘍細胞の細胞膜における染色性および染色強度が判定対象であり、細胞質に限局する陽性染色は非特異反応とみなす。

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