ヒアルロン酸 - 水分や電解質の保持と抗凝固作用を担う酸性ムコ多糖体。肝硬変や関節リウマチの進行度把握に有用。

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸(hyaluronic acid:HA)はN-アセチルグルコサミンとD-グルクロン酸が鎖状に結合した高分子量の酸性ムコ多糖体です。主として線維芽細胞や、肝で産生され、肝細胞により代謝を受けて血中から消失します。
ヒアルロン酸は生体内ではプロテオグリカン(*1)として、また細胞間ではマトリックスとして細胞の維持に不可欠な物質です。すなわちムコ多糖の名にみられる粘稠性を生かし、結合織における水分や電解質の保持、抗凝固作用を担う物質のひとつがヒアルロン酸です。

ヒアルロン酸は、おもに肝疾患(慢性肝炎〜肝硬変への移行期)で肝線維化の指標として血中濃度が測定されます。また結合組織や関節滑液にも存在するため関節リウマチや癌などでも高値をとることがあります。

正常肝ではヒアルロン酸は少量しか含まれていませんが、肝硬変の肝組織では肝の線維化が進行するため、約5倍程度に増加します。これは肝細胞での産生増加のほかに、慢性炎症の進展により肝細胞の破壊が起こり、ヒアルロン酸そのもののクリアランスが低下するためと考えられています。血中のW型コラーゲン、プロコラーゲン-V型ペプチド(P-V-P)とともに肝の線維化の指標として肝硬変の診断に有用とされています。

血中ヒアルロン酸は肝硬変、特にアルコール性肝硬変で高値を示し、急性・慢性肝炎、アルコール性脂肪肝では、あまり上昇しません。
一方、悪性胸膜中皮腫で胸水中のヒアルロン酸が高値になることがあります。本疾患での胸水細胞診や胸膜生検では必ずしも悪性細胞が得られないことがあるため、そのようなケースにおいては胸水中ヒアルロン酸測定は大変有用であるとされています。

検査材料:血清
測定方法:LA(ラテックス凝集比濁法)
基準値:単位(ng/ml)50.0以下
肝硬変の判定基準
130 ng/ml以上(50〜130 ng/mlの場合、肝の線維化が疑われます)

高値を示す病態
肝硬変、アルコール性肝硬変、関節リウマチ、SLE、Werner症候群(ムコ多糖症W型)
※胸水中:悪性胸膜中皮腫

(*1)プロテオグリカン(Proteoglycan)は、多くの糖鎖が結合した糖タンパク質の一種である。典型的なプロテオグリカンは、一つの核となるタンパク質(コアタンパク質、コアプロテインという)に、一本、あるいは多数のグリコサミノグリカン鎖が結合している。グリコサミノグリカン鎖は、長く、分岐してない糖鎖であり、硫酸基やウロン酸といった酸により負に荷電している。その多くは細胞外マトリックスや細胞表面に存在する。

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