腫瘍マーカー
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2008-04-06T16:33:56Z
腫瘍マーカー(しゅようマーカー)とは、癌の進行とともに増加する生体因子のことです。主に血液中に遊離してくる因子を抗体を使用して検出します。また、生検検体や摘出された腫瘍の病理組織標本を免疫染色し、腫瘍の確定病理診断や組織型の鑑別に用いる方法もあります。
Movable Type 3.35
ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.250
2008-04-06T16:26:03Z
2008-04-06T16:33:56Z
肺小細胞癌に特異性の高い血中の腫瘍マーカー。
ガストリン放出ペプチド前駆体(ProGRP)は、肺小細胞癌において高い陽性率と特異性を示す腫瘍マーカーです。
元来Pro GRP(pro-gastrin releasing peptide)は脳・腸管ペプチドの一種であるGRP(ガストリン放出ペプチド)の前駆体を意味しますが、ここで云うPro GRPとはGRP産生過程でその前駆体ペプチドの切断により等モルに血中に放出されるC-末端側フラグメントを示しています。
発生学上、神経内分泌細胞に起源をもつ肺小細胞癌組織よりGRPが産生されることは以前から知られていますが、血中で速やかに分解されるGRPの測定は一般に困難でした。これに対して生物活性のない前駆体ペプチド断片は極めて安定であり、肺小細胞癌患者の血中での濃度比は70倍以上にも達するといいます。すなわち、Pro GRPは腫瘍組織におけるGRP産生のより正確な指標となります。
従来肺小細胞癌のマーカーとして用いられてきた神経特異エノラーゼ(NSE)との比較では、
1)健常者と患者との血中濃度差が大きい
(互いの平均値に対してPro GRPで約100倍、NSEでは10倍未満とされる)
2)比較的早期の症例でも陽性例が多い
といった特徴が挙げられます。
なお、他の神経内分泌腫瘍として甲状腺髄様癌や膵内分泌腫瘍における有用性も示唆されています。神経芽細胞腫および褐色細胞腫ではGRP産生量が低く、測定意義は小さいとされています。
4歳未満の小児や腎不全患者では高値となり、間質性肺炎や胸膜炎でCut-off値を上回る例が報告されています。
検査材料:血清
測定方法:EIA
基準値:単位(pg/ml) 46.0未満
高値を示す病態
肺小細胞癌、その他の肺癌
前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.246
2008-03-13T09:47:25Z
2008-03-13T09:48:53Z
前立腺癌のマーカー。PSAとは物質的に異なるため、組み合わせによる正診率の向上が期待される。
酸性フォスファターゼ(ACP)はリン酸エステルを加水分解する酵
素の中で至適pHが酸性側にある酵素の総称で、その分子量は約10万
です。ACPは前立腺で大量に合成されているため、男性においては
血中濃度のかなりの部分を前立腺酸性フォスファターゼ(PAPまた
はPACP)が占めています。
前立腺酸性フォスファターゼを測定するには一般にRIA法のような
免疫学的測定法と比色法(UV法)がありますが、本法はRIA法(比
色法と区別するため、便宜上こちらをPAPと呼称する)で、抗原量
(蛋白量)が測定されます。
RIA法により測定されるPAPは前立腺肥大症などの良性疾患で10%程
度の偽陽性があるといわれます。また早期の癌では陽性率があまり
高くないとの指摘もあり、診断面での有用性は前立腺特異抗原(PSA)
などに劣るといわれています。一方、PAPは前立腺癌患者のフォロー
アップに優れているとされ、治療後のモニタリングや再燃の予測な
どに有用であるという報告もあります。特に内分泌療法において治
療開始前後のPAP値により治療奏効や再燃の予測などが試みられて
います。
免疫学測定法では比色法に比べ溶血等の影響は少ないといわれてい
ますが、採血後は速やかに血清分離を行い凍結で保存します。また
前立腺の触診や生検、膀胱鏡検査、尿道カテーテルの挿入などの機
械的刺激によっても高値になるのでこれらの処置を行った場合、処
置後24時間以内に採血した検体での測定は避けます。
検査材料:血清
測定方法:RIA(二抗体法)
基準値:単位(ng/ml) 3.0以下
高値を示す病態
前立腺癌、前立腺肥大症、前立腺炎
前立腺酸性フォスファターゼ(PACP)
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.245
2008-03-13T09:27:46Z
2008-03-13T09:34:03Z
前立腺癌で上昇する血中腫瘍マーカー。UV法では活性値を、RIA法では抗原蛋白量を測定。感度は後者が優れている
酸性フォスファターゼ(ACP)はリン酸エステルを加水分解する酵
素の中で至適pHが酸性側にある酵素の総称で、その分子量は約10万
です。ACPは前立腺で大量に合成されているため、男性においては
血中濃度のかなりの部分を前立腺酸性フォスファターゼ(prostatic
acid phosphatase:PAPまたはPACP)が占めています。前立腺酸性
フォスファターゼを測定するには一般にRIA法のような免疫学的測
定法と比色法(UV法)がありますが、本法は比色法(RIA法と区別
するため、便宜上こちらをPACPと呼称する)です。比色法で測定さ
れるのは活性値であり、免疫学的測定法(RIA法)では抗原量(蛋
白量)が測定されます。
PACPは酒石酸で活性が阻害されるため、その酵素活性はACPの総活
性と血清を酒石酸で処理した後の活性(非前立腺由来酸性フォスフ
ァターゼ活性)を測定し、前者から後者を減ずることにより求めら
れます(前立腺由来酸性フォスファターゼ活性値=総酸性フォスフ
ァターゼ−非前立腺由来酸性フォスファターゼ活性値)。
PACPでは生物学的酵素活性が測定されるため、検体の扱い方により
大きな影響を受けることがあり、特に溶血により検査値が変動する
ことがあるので採血に注意し、採血後は速やかに血清分離を行い凍
結で保存する。また前立腺の触診や生検、膀胱鏡検査、尿道カテー
テルの挿入などの機械的刺激によっても高値になるのでこれらの処
置を行った場合、処置後24時間以内に採血した検体での測定は避けます。
PACPは前立腺癌で高値になるためスクリーニングに用いられます。
しかし前立腺肥大などの良性疾患でも陽性になることがあり、また
早期癌での陽性率があまり高くないとの指摘もあり早期診断におけ
る有用性には限界があるといわれています。一方、治療前にPACPが
高値であった場合には治療後のモニタリングに用いられます。
ちなみに非前立腺由来酸性フォスファターゼである酒石酸抵抗性酸
性フォスファターゼは、破骨細胞の機能を表すことから臨床的に骨
代謝異常疾患の診断などに応用されています。
検査材料:血清
測定方法:UV法
基準値:単位(IU/l/37℃) 2.9以下
高値を示す病態
前立腺癌、骨転移を伴う悪性腫瘍、前立腺肥大症、急性前立腺炎
尿閉など
低値を示す病態 前立腺全摘術後
(術後モニターには高感度PSAを用いる)
総酸性フォスファターゼ(ACP)
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.244
2008-03-09T15:14:40Z
2008-03-09T15:18:05Z
酸性フォスファターゼ(ACP)は、リン酸エステルを加水分解する酵素の中で至適pHが酸性側にある酵素の総称。前立腺癌とその骨転移、前立腺疾患で上昇。
酸性フォスファターゼ(ACP)は、リン酸エステルを加水分解する
酵素の中で至適pHが酸性側にある酵素の総称です。ACPは、前立腺
で大量に合成されるため血中でのかなりの部分を前立腺酸性フォスファ
ターゼ(PACPまたはPAP)が占めています。PAPは酒石酸により
活性が阻害される特徴があります。
免疫活性を利用したPAPの直接測定としてRIA法やEIA法がある
(PAPの項を参照)。
ACP、PAPともに前立腺癌のスクリーニングや経過観察に用いられる
ことが多いのですが、前立腺肥大症の10〜20%程度に高値がみられ、
急性前立腺炎や尿管閉塞でも高値を示すことがあります。また、前
立腺触診や生検、尿道カテーテルの挿入などの機械的刺激により高
値になるので注意を要します。なお、前立腺腫瘍そのもののマーカ
ーとしては、PAPの方が感度、特異性の点で優れています。
最近では酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRACP)が破骨細胞
の機能を示すことから、臨床的には骨代謝異常疾患の診断などに応
用されています。
なお、ACPやPAP(前立腺性酸性フォスファターゼ)は検体の放置で
すみやかに失活するので、室温に置く時間は極力短くする必要があ
ります。
検査材料:血清
測定方法:UV法
基準値:単位(IU/l/37℃) 14.3以下
高値を示す病態
前立腺癌、骨転移を伴う悪性腫瘍、前立腺肥大症、急性前立腺炎
尿閉 など
低値を示す病態
前立腺全摘術後(術後モニターには高感度PSAを用いる)
PSA F/T比 (PSA free/total ratio)
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.243
2008-03-06T16:38:06Z
2008-03-06T16:39:59Z
総PSAの軽度上昇を示す前立腺癌鑑別のグレイゾーン領域で、肥大症と癌を判別する検査。前立腺癌で低値。
前立腺特異抗原(prostate-specific antigen:PSA)は、前立腺癌
のスクリーニング、診断、ならびに経過観察の最も優れた血清学的
指標として汎用されていますが、前立腺肥大症(BPH)でも軽度上
昇を示すことが知られています。このため、癌症例とBPH症例のい
ずれもが高頻度に分布し得る総PSA値(4.1〜10.0ng/ml)の領域は
診断的グレイゾーン(diagnostic gray zone)と呼ばれ、癌・非癌
の鑑別のための新たな指標が求められていました。
近年、PSAの血中存在様式の研究から、総PSAに対する遊離型(蛋白
非結合型)PSAの割合(F/T比)が前立腺癌患者と非癌患者とで異な
ることが明らかになりました。すなわち、前立腺癌患者のF/T比は
非癌患者に比べて有意に低値であり、上記グレイゾーン領域におけ
るF/T比の測定は前立腺癌の診断精度向上に貢献すると考えられます。
前立腺癌患者では、アンチキモトリプシン(ACT)と結合したPSA
(PSA-ACT)が、肥大症患者の血中より増加しています。このため、
F/T比の低下とPSA-ACTの増加が前立腺癌診断の指標となります。
検査材料:血清
測定方法:CLEIA
基準値:0.15以上
低値を示す病態 前立腺癌
尿中NMP22
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.242
2008-03-05T16:00:31Z
2008-03-05T16:02:47Z
NMP22濃度を測定することは尿路上皮癌の診断、膀胱癌の治療モニタリング、再発癌の発見などに有用とされています。
核マトリックスプロテイン22(NMP22)は,核マトリックス蛋白質(Nuclear
Matrix Protein)を免疫原として作成された2種類のモノクローナル
抗体302-22と302-18によって認識される核蛋白質です。MNP-22は、
細胞核内に存在するNuMA(Nuclear Mitotic Apparatus associated
Protein)が細胞死により可溶化型となり、体液中に出現した蛋白質
であると考えられています。
尿中NMP22値は尿路上皮癌(膀胱癌および腎盂尿管癌)で上昇するこ
とが認められています。また、臨床試験の結果などから、尿中の
NMP22濃度を測定することは尿路上皮癌の診断、膀胱癌の治療モニ
タリング、再発癌の発見などに有用とされています。
検査材料:尿
測定方法:ELISA
基準値:単位(U/ml) 12.0未満
高値を示す病態 尿路上皮癌
塩基性フェトプロテイン(BFP)
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.241
2008-03-04T15:43:38Z
2008-03-05T14:27:40Z
各種癌において比較的一定な陽性率を示す癌マーカー。術後の再発の指標としても有用。
尿中塩基性フェトプロテイン」の項参照)]]>
BFPと他の既存の腫瘍マーカーとの間に相関性は認められず、コン
ビネーションアッセイにおいても有用と考えられています。
すなわち臓器特異性は比較的低いものの、BFPは診断の確定した悪
性腫瘍の経過観察には有用なマーカーと考えることができます。
検査材料:血清
測定方法:EIA
基準値:単位(ng/ml)
高値を示す病態
胃癌、大腸癌、肝細胞癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、腎癌、
睾丸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、肝炎、肝硬変
尿中塩基性フェトプロテイン(BFP)
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.240
2008-03-04T15:40:39Z
2008-03-05T14:26:29Z
尿路上皮癌、特に膀胱癌に有用な癌マーカー。
塩基性フェトプロテイン(basic fetoprotein:BFP)は、1974年石
井により見出された塩基性の癌関連胎児性蛋白です。
血清中BFPは、CEA(癌胎児性抗原)と同様に「broad-spectrum」な
(臓器特異性の低い)腫瘍マーカーとしてすでに広く用いられてい
ますが、他方で尿中BFPが尿路上皮癌、とりわけ膀胱癌の有用なマ
ーカーになることが明らかになってきました。
実際、尿中に出現するBFPは血中から移行したものではなく尿路上
皮細胞に由来することから、尿路系疾患に対して高い特異性を有す
ると考えられます。
尿路上皮癌は、比較的頻度の高い疾患であるにも拘わらず、確立さ
れた生化学的マーカーに乏しい状態が続いていました。また尿細胞
診も、膀胱癌の大多数を占める乳頭状癌における陽性率が極めて低
いという難点が指摘されています。
尿中BFPの測定は、これら検査法の限界を補う新たなマーカーとし
て膀胱癌のスクリーニング、および治療モニタリングに有用と期待
されています。
なお、BFPは白血球中にも存在し時間経過とともに放出されること
から、採尿時、肉眼的に沈渣が認められる場合、一定時間静置後の
上清部分を検体とします。直ちに検査しない場合は安定化剤入りの
専用容器に移注し、2〜10℃にて冷蔵保存します(凍結状態では速
やかに失活するため、保存時、凍結してはならない)。膀胱炎合併時
の判定は慎重を期すべきです。
検査材料:尿
測定方法:LA(ラテックス凝集比濁法)
基準値:単位(ng/ml) 10以下
高値を示す病態
膀胱癌、尿道癌、尿管癌、膀胱炎
組織ポリペプチド抗原(TPA)
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.239
2008-03-04T15:28:05Z
2008-03-04T15:30:39Z
臓器特異性が低く、さまざまな癌において高値となる。癌の増殖活性を反映するため、治療経過の把握に有用な指標。
組織ポリペプチド抗原(TPA)は、1957年に報告された腫瘍関連抗
原です。胎児・胎盤組織のような細胞増殖の活発な正常組織にもそ
の存在が認められることから、細胞分裂過程に何らかの関与をしてい
ると考えられています。
実際、最近になってTPAの腫瘍細胞における産生が細胞周期のS後期
からG2期に行なわれ、M期に細胞外に放出されることが発見されました。
また別の報告では、TPAと細胞骨格を構成するサイトケラチンとの
間にアミノ酸配列の広範囲な相同性が見出されており、TPAがサイ
トケラチン前駆体あるいはその関連物質である可能性を示唆しています。
TPA産生量は癌の増殖活性に相関し、担癌患者では血中TPA値が臓器
非特異的に上昇するため、その診断や治療経過の把握に有用な指標
となります。なお、TPAは良性疾患にも高値例を認めますが、その
上昇は悪性疾患とは異なって一過性であるとされています。
検査材料:血清
測定方法:IRMA(ビーズ固相法)
基準値:単位(U/l)70以下
高値を示す病態
胃癌、食道癌、大腸癌、肝細胞癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、
卵巣癌、子宮癌、急性・慢性肝炎、胆道系炎症、膵炎、肺炎、肺膿瘍
BCA225:breast cancer antigen 225
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.238
2008-03-01T16:12:48Z
2008-03-01T16:17:12Z
乳癌の血中腫瘍マーカー。乳癌術後のモニタリングや再発乳癌に対する治療効果判定に有用。
BCA225は、Mesa-Tejadaら(1978)により乳癌細胞株培養上清中の
ウイルス様粒子画分を免疫原として作製されたモノクローナル抗体
CU18およびCU46によって認識される抗原で、免疫組織化学的に乳癌
に特異的とされています。
BCA225は病期の進行に伴って陽性率の上昇を認め、さらに再発乳癌
では極めて高い陽性率を示します。こうした所見は進行癌や再発性
乳癌において癌細胞の崩壊や癌細胞自体の血中への流出頻度が増加
することを反映したものと推定されます。したがって、BCA225の臨
床的意義は乳癌の早期発見よりも乳癌術後のモニタリングや再発乳
癌に対する治療効果判定にあるといえます。
乳癌の血中腫瘍マーカーには他にCA15-3があり、CEAやNCC-ST-439
なども用いられることがあります。いずれも組み合わせることで陽
性率は上昇しますが、保険請求上の留意も必要です。
検査材料:血清
測定方法:EIA
基準値:単位(U/ml)160以下
高値を示す病態:原発性乳癌
CA15-3:乳癌の再発・転移のモニタリング
tag:www.kensin-kensa.com,2008://1.237
2008-02-21T17:10:11Z
2008-02-21T17:13:11Z
CA15-3は、乳癌の再発・転移のモニタリングに有用な血中腫瘍マーカーです。
CA15-3は、全く独立に作製された2種類のモノクローナル抗体115D8
およびDF3により認識される乳癌関連抗原です。115D8は乳脂肪球被
膜上の糖蛋白MAM-6を、DF3は乳癌肝転移巣の細胞膜成分をそれぞれ
免疫原とする抗体であり、乳癌においてはあらゆる組織型の細胞に
反応することが報告されています。
CA15-3は組織の悪性化に伴う細胞破壊により血中に放出されると推
定されますが、早期症例の陽性率は低く、むしろ再発乳癌や転移性乳
癌において血中レベルの上昇が著しいことから、再発・転移の検出に
有用なマーカーと考えられています。
検査材料:血清
測定方法:CLIA
基準値:単位(U/ml)27.0以下
高値を示す病態:乳癌
食道癌・大腸癌・乳癌の診断の補助に抗p53抗体
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.231
2007-12-18T15:55:53Z
2007-12-18T15:59:36Z
抗p53抗体の測定は、癌患者の体内に産生される変異したp53 に対する自己抗体を検出するもので、早期の大腸癌、食道癌、乳癌の診断が可能です。
p53は癌抑制遺伝子で、その遺伝子から作られたp53タンパク質は
DNAに傷害を受けた細胞に対して、細胞増殖を中止・DNAの修復を促
進・修復不可能な細胞を殺す等の働きをします。P53タンパク質は
通常細胞内にて短時間で代謝されるため、正常な組織では検出され
ませんが、細胞が癌化すると代謝が低下しp53タンパク質が多量に
蓄積することが知られています。
p53は全長393アミノ酸からなり、N末端ドメイン、コアドメイン、
C末端ドメインの3つの領域から構成されています。コアドメインは
DNA結合に関与する領域で、癌に認められる変異のほとんどがこの
領域に集中しています。様々な腫瘍で見られる抗p53抗体の抗原エ
ピトープ部位はN末あるいはC末に存在する少数のペプチド配列のサ
ブセットに限定されています。
・抗p53抗体と癌
p53蛋白質は多彩な活性によって遺伝子の異常から生体を守る機能
を担っています。その主な活性としては、遺伝子に異常が発生した
細胞における、遺伝子転写制御を介した細胞周期進行の制御・遺伝
子修復酵素の活性化・アポトーシス誘導能等が挙げられます。p53
遺伝子自体に突然変異が生じるとこれらのp53蛋白質の機能が欠損
し、腫瘍の発生に至るというメカニズムが考えられています。
ヒト癌細胞におけるp53遺伝子の変異は、大腸・胃・乳腺・肺・脳・
食道など多くのヒトの腫瘍においてp53遺伝子が突然変異を起こし
ていることが見出され、p53蛋白質の異常な蓄積が多くの腫瘍組織
において観察されています。さらに癌高発家系においてp53遺伝子
に変異が見られることが報告されています(Li-Fraumeni症候群)。
抗p53抗体の測定は、癌患者の体内に産生される変異したp53 に対
する自己抗体を検出するもので、早期(ステージ1あるいは2)の大
腸癌、食道癌、乳癌の診断が可能です。特に食道癌では、従来有用
な腫瘍マーカーが存在していませんでしたが、早期食道がんでも高
い陽性率を示します。また、大腸癌の早期ステージにおいてp53 抗
体は従来の腫瘍マーカーCEA に比べ、高い陽性率を示します。
検査方法:EIA
検査材料:血清
基準値:単位(U/ml)1.30
組織ポリペプチド抗原(TPA)
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.225
2007-11-21T09:17:02Z
2007-11-21T09:18:41Z
臓器特異性が低く、さまざまな癌において高値となる。癌の増殖活性を反映するため、治療経過の把握に有用な指標。
組織ポリペプチド抗原(tissue polypeptide antigen:TPA)は、
各種ヒト悪性腫瘍の細胞膜や細胞質内小胞体に存在する共通抗原と
して1957年に同定された単鎖ポリペプチドです。
胎児・胎盤組織のような細胞増殖の活発な正常組織にもその存在が
認められることから、細胞分裂過程に何らかの関与をしていると考
えられています。
実際、最近になってTPAの腫瘍細胞における産生が細胞周期のS後期
からG2期に行なわれ、M期に細胞外に放出されることが発見されま
した。
また別の報告では、TPAと細胞骨格を構成するサイトケラチンとの
間にアミノ酸配列の広範囲な相同性が見出されており、TPAがサイ
トケラチン前駆体あるいはその関連物質である可能性を示唆してい
ます。
悪性腫瘍の増殖活性に相関して、癌周囲組織や血中に増加し、正常
組織の肺胞上皮・乳腺・消化管上皮・尿細管上皮・子宮頚管腺・卵
胞上皮・汗腺に存在します。
血清TPAは、腫瘍の原発臓器や、組織型とは無関係に悪性例で高値
を示し、経時的推移が悪性腫瘍の病態を反映している場合が多いの
で、治療効果の判定、あるいは再発・転移のモニタリング、予後推
察の指標としても利用されます。
一方尿中TPA値は、TPAが尿管上皮にも存在する為、膀胱癌などの尿
路上皮癌の診断や、治療効果の推測・経過観察に有用です。
TPA産生量は癌の増殖活性に相関し、担癌患者では血中TPA値が臓器
非特異的に上昇するため、その診断や治療経過の把握に有用な指標
となります。なお、TPAは良性疾患にも高値例を認めますが、その
上昇は悪性疾患とは異なって一過性であるとされています。
検査材料:血清
測定方法:RIA固相法
基準値:単位(U/l)70以下
高値を示す病態
胃癌、食道癌、大腸癌、肝細胞癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、
卵巣癌、子宮癌、急性・慢性肝炎、胆道系炎症、膵炎、肺炎、
肺膿瘍
その他炎症性疾患、インフルエンザ、肝炎、肝硬変、呼吸器感染
症、胆管感染症、糖尿病、尿路感染症
T型コラーゲン-C-テロペプチド(TCTP)
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.203
2007-10-31T15:06:29Z
2007-10-31T15:08:35Z
骨基質の分解産物で骨吸収量を反映する指標。癌の骨転移の有無や治療効果の判定に有用。
T型コラーゲン-C-テロペプチド(typeTcollagen closs-linked
C-telopeptide:TCTP)は、骨基質の主要構成蛋白であるT型コラ
ーゲンの分解産物です。
骨のT型コラーゲン分子間は両端のテロペプチド領域を中心に、ピ
リジノリンあるいはデオキシピリジノリンと呼ばれる物質を介して
安定な架橋構造を形成しています。
破骨細胞による骨吸収により分解生成し、血中に放出されるT型コ
ラーゲンの架橋構造部分を含めた「T型コラーゲンのC-末端側ペプ
チド断片」がTCTPです。したがって、血中TCTP濃度は骨組織にお
ける骨吸収量を反映する指標と考えられます。
骨吸収状態の評価は、特に骨量減少をきたす種々の代謝性骨疾患の
病態把握に重要であり、実際、副甲状腺機能亢進症、甲状腺機能亢
進症、胃切除例、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症などの疾患に血
中TCTPの上昇が報告されています。ただし、血中TCTP値は腎機能
の影響を受け「GFR<50ml/min.」で高値化するため、判定に注意を
要します。
また、前立腺癌をはじめとする悪性腫瘍患者の血中TCTP濃度は、
骨転移を有する症例で高率に異常高値を示すことが知られており、
骨転移の有無の診断や治療効果の判定に有用です。
なお、血中TCTP値に著明な年齢差・性差は認められず、同じT型
コラーゲンのN-末端側代謝産物であるNTx(T型コラーゲン架橋N-
テロペプチド)が骨吸収亢進を呈する閉経後女性で高値となる点と
異なります。(骨粗鬆症の生化学的マーカーには適さない)
検査材料:血清
基準値:単位(ng/ml)5.5未満(骨転移判定のcut off値)
測定方法:RIA(ニ抗体法)
高値を示す病態
癌の骨転移(乳癌、肺癌、前立腺癌)、副甲状腺機能亢進症、
甲状腺機能亢進症、胃切除例、悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症
慢性腎不全
シフラ(CYFRA:サイトケラチン19フラグメント)
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.202
2007-10-30T16:37:16Z
2007-10-30T16:38:58Z
肺の扁平上皮癌および腺癌の診断、経過観察に有用な血中腫瘍マーカー。
シフラ(cytokeratin 19 fragment:CYFRA)は、上皮細胞の中間径
フィラメントの構成蛋白であるサイトケラチン分子種の一つである
サイトケラチン19の可溶性フラグメントの通称です。
各種サイトケラチンには一定の細胞種特異性が存在します。このう
ちサイトケラチン19は広く上皮性細胞に分布し、肺の非小細胞癌、
とりわけ扁平上皮癌や腺癌で多量に産生されることが知られていま
す。
癌患者においては、細胞内プロテアーゼの作用に基づくサイトケラ
チンの分解亢進により可溶性フラグメント(シフラ)の血清中濃度
が増加すると考えられており、その測定は非小細胞肺癌の血清診断
に有用です。また、各種婦人科癌でも高値を示すことが報告されて
います。血中濃度に対する喫煙の影響は認められませんが、加齢に
伴ってやや高値を呈する例が出現することには留意すべきです。
なお、近年、臓器非特異的な腫瘍マーカーであるTPA(組織ポリペ
プチド抗原)もまたサイトケラチン関連物質であることが明らかに
なり、その測定系に用いられる抗体がサイトケラチン8、18および
19と交差反応性を示すことが報告されています。すなわち、シフラ
とTPAの同時測定は意義が乏しく、避けるべきです。
肺癌、とりわけ扁平上皮癌ではシフラの方が一般的になっています。
検査材料:血清
基準値:単位(ng/ml)3.5以下
測定方法:ECLIA
高値を示す病態
肺扁平上皮癌、肺腺癌、卵巣癌、子宮頸部扁平上皮癌、子宮内膜
癌、再発乳癌など
SCC抗原
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.201
2007-10-30T16:35:14Z
2007-10-30T16:36:39Z
子宮頚部、肺、食道、頭頚部、尿路・性器、皮膚などの各扁平上皮癌で高値となる血清腫瘍マーカー。
SCC抗原(squamous cell carcinoma antigen )は、子宮頚部扁
平上皮癌の肝転移巣より分離・精製された腫瘍関連抗原で、1977年
に加藤らが報告したTA-4と共通の抗原性を有する分子量45,000の蛋
白です。
等電点電気泳動においてSCC抗原は14の亜分画に分けられますが、
正常扁平上皮細胞では主に中性分画のみであるのに対して癌細胞で
は酸性分画が増加するとされています。
現在その測定に用いられているモノクローナル抗体は酸性分画によ
り強く反応し、癌特異性が高いと考えられます。
SCC抗原は子宮頚部、肺、食道、頭頚部、尿路・性器、皮膚など
の各扁平上皮癌患者の血中に高頻度に検出されることが報告されて
おり、それらの優れたマーカーとなります。
検査材料:血清
基準値:単位(ng/ml)1.5以下
測定方法:CLIA
高値を示す病態
子宮頚癌、肺癌、食道癌、頭頚部癌、尿路・性器癌、皮膚癌など
の扁平上皮癌
ガストリン放出ペプチド前駆体(Pro GRP)
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.196
2007-10-27T16:15:02Z
2007-10-27T16:17:38Z
肺小細胞癌に特異性の高い血中の腫瘍マーカー。
ガストリン放出ペプチド前駆体(pro-gastrin releasing peptide
:ProGRP)は、肺小細胞癌において高い陽性率と特異性を示す腫瘍
マーカーです。
元来「Pro GRP」は脳・腸管ペプチドの一種であるGRP(ガストリン
放出ペプチド)の前駆体を意味するが、ここで云うPro GRPとはGRP
産生過程でその前駆体ペプチドの切断により等モルに血中に放出さ
れるC-末端側フラグメントを示しています。
発生学上、神経内分泌細胞に起源をもつ肺小細胞癌組織よりGRPが
産生されることは以前から知られていますが、血中で速やかに分解
されるGRPの測定は一般に困難でした。これに対して生物活性のな
い前駆体ペプチド断片は極めて安定であり、肺小細胞癌患者の血中
での濃度比は70倍以上にも達します。すなわち、Pro GRPは腫瘍組
織におけるGRP産生のより正確な指標となります。
従来肺小細胞癌のマーカーとして用いられてきた神経特異エノラー
ゼ(NSE)との比較では、
1)健常者と患者との血中濃度差が大きい
(互いの平均値に対してPro GRPで約100倍、NSEでは10倍未満
とされる)
2)比較的早期の症例でも陽性例が多い
といった特徴が挙げられます。
なお、他の神経内分泌腫瘍として甲状腺髄様癌や膵内分泌腫瘍にお
ける有用性も示唆されています。神経芽細胞腫および褐色細胞腫で
はGRP産生量が低く、測定意義は小さくなります。
4歳未満の小児や腎不全患者では高値となります。また、間質性肺
炎や胸膜炎でCut-off値を上回る例が報告されています。
検査材料:血清
基準値:単位(pg/ml)46.0未満
測定方法:EIA
高値を示す病態
肺小細胞癌、その他の肺癌
神経特異エノラーゼ(NSE)
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.195
2007-10-27T16:11:40Z
2007-10-27T16:14:13Z
肺小細胞癌、神経芽細胞腫、神経内分泌系腫瘍の診断と経過観察に有用な血中腫瘍マーカー。
解糖系の酵素であるエノラーゼはα, β, γの3種類のサブユニット
の組合せから成る二量体構造をもつ。このうちαγおよびγγ型の
エノラーゼは主に神経細胞や軸索突起に存在するため、神経特異エ
ノラーゼ(neuron specific γ- enolase :NSE)と呼ばれています。
近年、NSEは各臓器に分布する神経内分泌細胞にも存在することが
明らかとなり、その腫瘍であるAPUDoma(*)やそれに類似した性
格を示す燕麦細胞型の肺小細胞癌、神経芽細胞腫で腫瘍細胞より血
中に逸脱・増加することから、その有用なマーカーとして臨床応用
されています。
NSE測定の検体として一般には血清が用いられますが、EDTA血漿を
検体とした場合、癌患者において有意に高値を示すとの報告があり
ます。その確かな理由は不明ながら、EDTAがNSEの抗原構造の安定
化に寄与しているのではないかとの推測もあり、さらなる検討が期
待されます。また神経芽細胞腫においては髄液中に増加します。
*APUDoma:amineprecursor uptake and decarboxylationを伴う細
胞に由来する腫瘍。神経外胚葉細胞に由来し、ACTH、MSH、ADH、カ
ルシトニン、VIPなどを産生します。
検査材料:血清
基準値:単位(pg/ml)10.0以下
測定方法:IRMA(ビーズ固相法)
高値を示す病態
肺小細胞癌、APUDoma、神経芽細胞腫、肺良性疾患、胃潰瘍
CA19-9
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.191
2007-10-25T16:08:58Z
2007-10-25T16:12:52Z
膵癌、胆道癌をはじめとする各種消化器癌で上昇する血中腫瘍マーカー。血液型Lewis抗原の影響を受ける。
CA19-9(carbohydrate antigen 19-9 )は、1979年にKoprowskiら
により結腸癌培養細胞株を免疫原として作製されたモノクローナル
抗体NS19-9によって認識される血液型関連糖鎖抗原です。
膵癌、胆道癌を始めとする各種消化器癌患者血中に高頻度かつ高濃
度に検出され、優れた腫瘍マーカーとしてその臨床的評価が確立し
ており、最もよく測定される腫瘍マーカーの一つです。良性疾患に
おける偽陽性率は低く、その場合も100U/mlを超えるような異常高
値例は比較的稀です。
CA19-9がLewis 血液型糖鎖に関連する抗原、すなわちsialosyl Lea
であることは早くから明らかにされ、その血中濃度はLewis血液型
の影響を受けるとする見解が一般的です。実際、免疫組織化学的検
討においてLea陽性部位に一致して、あるいはその一部にCA19-9の
局在が認められるという報告があります。
日本人の約10%を占めるLe抗原陰性者では、膵癌などにおいても
CA19-9が低値に留まるとされていますが、Le抗原陰性者でCA19-9高
値を示す例がないわけではありません。
癌組織と非癌組織とでLewis抗原の表現型が異なるとの知見もあり、
CA19-9とLewis血液型との関係にはなお検討すべき余地があるとい
う意見もあります。
検査材料:血清
基準値:単位(U/ml)37.0以下
測定方法: CLIA
高値を示す病態
膵癌、肝細胞癌、胆道癌、肝内胆管癌、大腸癌、慢性膵炎、
慢性肝炎、肝硬変、胆石症、消化管潰瘍
SPan-1抗原
tag:www.kensin-kensa.com,2007://1.190
2007-10-25T16:04:52Z
2007-10-25T16:08:18Z
膵癌をはじめとする消化器癌の血清腫瘍マーカー。良性疾患での偽陽性率が低いといわれる。
SPan-1抗原(s-pancreas-1 antigen)は、鄭ら(1987)が培養膵
癌細胞株SW1990を免疫原として作製したモノクローナル抗体により
認識される腫瘍関連抗原です。
そのエピトープは巨大分子ムチン様糖蛋白上にあり、抗原性がノイ
ラミニダーゼ処理によって消失すること、熱やプロテアーゼ処理に
よっても保持されていることから、非還元末端にシアル酸を有する
糖鎖と考えられています。いくつかの報告ではCA19-9と同じくsialosyl
Leaをエピトープとする可能性が高い。
免疫組織化学的には、主に膵癌をはじめとする消化器癌に膜構成成
分として本抗原が存在することが認められ、その強い分泌性から血
中にも高率に出現します。SPan-1抗原の良性疾患による偽陽性率
は極めて低く(正常膵,腎尿細管,胆管上皮,気管上皮にもわずかに
存在する)、さらに膵癌との鑑別に困難を伴う急性膵炎の偽陽性例
も多くは軽度上昇に留まることから、より特異性の高い癌の診断、
および術後・治療後の経過観察に有用な指標とされています。
検査材料:血清
基準値:単位(U/ml)30以下
測定方法:IRMA(ビーズ固相法)
高値を示す病態
膵癌、肝細胞癌、胆道癌、肝内胆管癌、大腸癌、慢性膵炎